大東流…じゃないのかな。
以前、大東流を教えるわけにいかんので、苦肉の策で身体操作の会をやっていた。
今は希望者があるときだけにしてる。
その最初の門人で、今は弓道の仲間であるSさん。
弓道に身体操作の理合を生かして、最高峰の全国大会にも出場した。
そういうSさんとは、時々隣県の弓道の先生のところにお邪魔する。
片道3時間をゆっくりおしゃべりしながら。
そのときに、次のようなことを言われた。
本当に、身体操作を習っててよかった。
私が、「せやね。弓道に生かしているからSさんすごいよ」と言うと、「いえ、弓道じゃなくて(^^)」と笑った。
この前福岡に行ったんです。
地下鉄の中洲川端の駅って、エレベーターもエスカレータもないのに、すっごい長い階段があるんですよ。
ふむふむ。
そこを上っていると、一人のおばあさんがいたんです。
すっごく小柄な方で、背中が曲がってて、手すりにすがって登っていくんです。
右で手すりで、左はもう階段に着きそうな感じ。
一段一段休みながら行くけど、本当に辛そうで。
なので、思い切って声をかけたんです。
「もし良かったら、一緒に上りましょう。つかまってよいですよ」と。
そしたら、そのおばあさん、びっくりした顔して、でも嬉しそうに私の腕につかまったんです。
一瞬、私も身体が硬くなって、筋力でおばあさんを支えようとしたんですが、思い出したんですよ!! 教えていただいたことを。
なので、支えず、ただ、まっすぐ。おばあさんのすがる手は感じながら、自分自身を崩さずにまっすぐゆっくり合わせて登ったんです。
そしたら、おばあさんは私に重心を預けることもなく、ただ、本当に一緒に階段を踏みながら上がっていったって感じで。
おばあさんも「本当に楽だったわ。ありがとう」とお礼を言ってくれたけど、私も本当に楽でした。
安全に行ける自信というか、確信もあって、すごく役に立ちました! ありがとうございます。
私は、顛末を伺い、「いや、すごいのは、あなたでしょ! さすがSさん。」と心から思った。
人を助けることをこんなに自然にやってのけるSさんが、すごい。
少しでも、私がお伝えしたことがお役にたっているなら、こんなにうれしいことはない。
(と言いつつ、私がお伝えしたというよりは、大東流の最初の道場で習ったことである)。
Sさんの体験にはもう一つある。
世界選手権とかで、スポーツ選手が空港で出迎えられるシーンを見たときに彼女が思ったこと。
カートを押してる…。
Sさんはお掃除屋さんである。
掃除道具を満載したカートを常に運んでいる。
「押しちゃダメって、言ってましたよね!」ニコニコと彼女は言う。
私の指導を守って、常に荷物(カート)は「運ぶ」。
自分の体は崩さず、接点を大事にしてカートに先に行ってもらう。
自分はカートが進むからついていく感覚。(押してるわけではない)。
とても楽で、自分自身のトレーニングになると言っていたが、「スポーツ選手、駄目ですよねー(^^」と笑う。
あんなに重そうに、自分を崩して荷物に寄りかかってるの、辛いですよねー。
あはは。
弟子に教わるとはこのこと。
私もスポーツ選手の空港での様子とかみたことあるが、そんな風に考えなかった。
私自身はカートを押すことはまずないが、面白い視点で車の中で大いに笑いあった。
なるほどなるほど。
本当に勉強になった道行であった。