五段合格

2023/04/13(木) 09:11
念願の合格だった。
弓道を始めたのが、平成27年の10月。
四段をとったのが、平成30年の8月。
この間、二年10ヶ月と四年と八ヶ月である。
四段から五段が倍くらいでビビる。
次の錬士は八年後?
(まあ、それでも普通の人たちよりはずっと早いのだが)。

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忘れないようにメモをしておこう。

天気は晴れ。
ときどき雲がかかる。
朝は曇っていたが、だんだん晴れてまぶしい。
それよりも「風」。風がすごい。
突風が吹くので、掲示のホワイトボードがあおられて動いて行ったり、立ち札(木製で重たい)が動いたり。
立っててもよろめくくらいの風。

(先週の練習のときも風がすごくて、その大風の中稽古したのである。T先生と。T先生は弱い弓と軽い矢なので、会でタイミングをみていた。私は強い弓重い矢なので、あまり気にしていなかった。が、その時の風よりも強い気がする)。

私の立ちは最終のグループとなった。
コロナから、人が密になることを避けるために、だいたい3グループにわけ、それぞれ受付と合格発表がある。
今回山陰のY市は、44人申し込み。事前に一人欠席と知らされていた。
なので、1グループ15人(欠席一人)、2グループ15人(欠席なし)、3グループ14人。
ところが、前日練習で3グループの同じ立ちの男性が欠席ということになった。
というわけで、

1グループ 5,5。4
2グループ 5,5,5
3グループ 5,4,4

という分け方になった。
私は3グループの最初の立ちなので、欠席者の恩恵はなし。だが、今回午後から「範教錬士会」があるので、「取りかけの間合い」である。
(普段は「物見返しの間合い」というとんでもない長くかかるやり方だ。1立ち30分くらいかかる。その間、一人2本引くだけだが、他人の引く間ずっと跪坐で待つ。足が死ぬ。「取りかけの間合い」では20分~25分だが、このちょっとの差が大きい)。

1グループには、同じH道場のJ子さんと旦那さんのTさんが、大前と大落で参加だ。1番と15番。
1グループの全員の射を観覧席からじっくり見た。(受付は済ませてある)

J子ちゃんは×〇。体配も悪くないが、後ろの2番の体配のほうが上手でアラが目立つ。
Tさんは、○○。1グループで束中したのはTさんだけ。これは合格だなと思った。
Tさんの同じ立ちの大前は女性で立射。座らないのは楽かというと、そうでもないのであるが、彼女の場合すっごく驚いたのは立射で襷捌きをおこなったことである。ふつうは立射の場合は襷はあらかじめかけて出る。それなのに彼女は射場で立ったまま襷がけをしたのである。そしてもっと驚くべきことに、立射用の長い襷(端っこが輪っかになっていて引っかけることができる長めの襷)ではなかった。ふつうの襷で立ったままもたつくことなく、上手にかけた。
これはすごかった。坐射の場合も襷がけをスムーズにするのは大変なのに!
しかし、射は特別に良いという感じではなく、〇×で終わったので、難しいだろうなと思っていた。

1グループが終わって、A3の紙にでかでかと「15」とあるのが貼りだされた。つまり1グループは合格者1名。それもTさん。おめでとう!!

2グループが始まると、私も見学している余裕はない。
最後に巻き藁を引きに行く。5回くらい引いただろうか。
深呼吸をしたり、ストレッチをしたりして心を落ち着ける。

私たちは3グループの最初の立ちなので、2グループの3番目の立ちが審査の間、控えに入る。
終わった瞬間、5人で射場に入り「位取り」をする。位取りとは立ち位置を見たり、何歩で歩くかを決めたりすることだ。
弓道審査では、立ちの五人全員が揃っていることも審査対象である。
私だけ「替え弓」。他の人は「替え弦」を持ってきた。(行射の途中で弦が切れたりした場合、新しい弦をもっていけば張りなおしてくれるし、替え弓なら弓を交換してくれる)。

私が今回使ったのは桑幡正清16キロ。出発の直前計ったら85センチで16.6キロだったので、私の引尺88センチでは17キロくらいあるだろう。
でも、ニベ弓が連日の暑さと湿気で弱りに弱ったので(14.8キロ)、急遽ピンチヒッターとして使うのである。
替え弓は同じく桑幡15.5キロ。

2グループが終わって位取りを一回だけやって、他の立ちの人が来たので、控えに戻る。

すぐに声がかかり、審査が始まった。
1.T先生
2、Iさん
3.わたし
4.Yさん
5.Kさん

全員女性なので、とても合わせやすい。
なにより私は一番のT先生と何度も何度も稽古してきたのだ。大丈夫と言い聞かせて、Iさんともし合わなくてもT先生とは会うはずと足を踏み出す。

いつもながらIさんのタイミングが少し早い。

しかし、いつも震えて時間をロスする襷がけも今回はなんとかなった。

最初のT先生、外す。
次のIさん、外す。

私の番になった。とにかく突風が吹く。
なんとか番えて、会。会は風にあおられてなかなか離せない。
恐ろしく長い会になってしまった。(離そうとする度に風が吹く)
もう無理と思ったら勝手に離れたが良い射ではなかった。
私の感触では、押手が押し切ってないので、下へ抜いたんだなと。
矢どころは五時の下。一番抜きたくないところ。

矢どころを見ている暇はなかった。弓も返るのが不十分で、弓倒しが難しい。しかし、ここで持ち直すと「私弓返り失敗しました」というアピールになってしまう。上手に(?)ごまかして執り弓の姿勢に戻る。

あー、またダメだった。
意気消沈して次の人の射の音を聞いているがよく覚えていない。

そして二本め。

大前 ×
二番 〇

ヨシ! と心の中で叫ぶ。
T先生は気の毒だが、仕方がない。

精一杯の射をしよう。落ちるとか落ちないとかそんなことを考える余裕はなかった。
丁寧に動く。M先生の教えを胸に。縦線、横線。
二回目は風は気にならなかった。
会も十分だったと思う。
力みなく離れて、矢は中心からやや8時よりの方角の中黒あたり的中した。
良い音だった。

力みなく離れて伸びたので、残心も意識せず十分だった。(というか、離した後、しばらく戻れなかった)。
自分としては本当に良い射だったと思う。M先生が見てくれていたら「そうよ。今のよ!」と喜んでくれただろう。M先生の顔が浮かんだ。
M先生は厳しいので、そのあとの襷外しや体配もいろいろ言うだろう。だから不合格でもしっかり体配をやろうと思った。
肘で動く、腰をしっかり据える。武士のやってることなのよ。殺し合いも良しとしている覚悟を見せて! というようなことを言われたことを思い出す。
殺し合いはともかく、殺すということは殺されるということだ。動きに寸分の隙もあってはならない。

終わったとき、「良い稽古ができた」と素直に喜んだ。
ただし、片矢でも合格の可能性はゼロではないので、期待しなかったといえばウソになる。

控えに戻ると、2グループの合格発表があり、三名も合格しているのを見る。
こりゃだめだわ_| ̄|○と思った。
以前もそうだったのだ。最後の3グループめは「該当者なし」だったんだよねえ。

装束をほどいて、最後の立ちの見学をした。
最後の立ちは大前がいつも一緒に稽古している自衛隊のKさん、大落が時々ご一緒するFさん(彼女は私が弓道を始めたときには既に四段であるから、大先輩である)。
Kくんの会は長かった。最長記録だったんじゃないだろうか。2分くらいは持っていた。
しかし、離れはバラバラとした感じで的中なし。残念。
Fさんは、小さくまとまっている射ではあったが、〇〇。
大落で束中なら、合格間違いない。(しかし、最後の立ちは体配がひどかった。全然あってなくて、Fさんが落ちるとしたら、この体配のひどさを連帯責任ということだろうなと、合格したTさんと話をしていた。)

控えに戻って、T先生と次の審査の話をする。
彼女は次の審査は自分の連合以外のところで受けるそうだ。
私は自分の地区の4か月後の審査を受けようと思って、すぐにホテルを予約しておこうと思った。山陰のM市の弓道場はホテルが目の前でとても使いよいのである。

3グループは最後の44番だけだろうな…。もし束中がいなければ、私たちも俎上に上るんだが…。

一応ね。落ちてるけど一応見に行くわ。
そう言って、合格発表を見に行った。揉めているのか、他の立ちよりも発表までに時間がかかる。
そのころには「範教錬士会」の面々も続々と集まってきていて、うちの県の女性トップが声をかけてくれた「こんにちは!見てましたよ」「あ、ありがとうございます。風がすごかったです。」そう私が答えるとTT先生は「御髪がすごいことになってましたね」と笑った。

はー。射については一言もなかった…ひどかったのだろうな。
自分としては、良い一射(乙矢)だったのだが。

そうこうしていると、紙をもって、進行の人が合格者を貼りだした。

32,33,44

え? 3人もいる! 44はFさん。そうだよね。束ったもんね…。
え? 33は私だよ?
浮かない顔をして合格発表を見に来た32番のIさんが真後ろにいた。
「合格しとるよ?」と私が声をかけると、アホのようにポカンとした顔になった。

うっそ?

ほんと。

彼女はだんだん笑顔になって、私はその苦手なIさんをぎゅっと抱きしめた。ハグした。

私はだめだと思ってた。だって、甲矢は下に抜いたもん。掃き矢と言われても仕方ないもんというと、Iさんは目を丸くして「掃き矢じゃないよ。蹴ったくらいのだったよ。というか、聞こえんかった? 審査員席の先生が「惜しい」ってつぶやいたよ。
私は、記憶の記憶違いしていたらしい。だめだと思ったとたん、悪い方向に記憶がすり替わったのだろうか。

他の人から祝福の嵐。
こっちは実感がまるでない。
震える手で登録料を支払い、震える手でM先生に電話した。
電話の向こうのM先生は「片矢で受かった? それは誇ってよいよ。ヨカッタ」と本当にわがことのように喜んでくれたのである。
あと、家族に電話し、H道場の会長、前会長にメール。あとはJ子ちゃんがラインで皆に送ってくれるだろう。

M先生が「運転気をつけなさいよ! ぼーっとしてるでしょ!」と言ってくれなかったら、事故ってた。
ふわふわした気持ちのまま帰途についた。
帰途はまた300キロあまりを運転。途中M先生のお宅による。
本当に喜んでくださって、やっと合格したのだなと実感がわいてくる。

感謝である。
No.501 PERMALINK

 

UNARRANGEMENT 2023/04/08(土) 22:30
五段合格しました。
No.500 PERMALINK